2017年も Perl入学式 で様々な試みをしました。その一つがシーサー株式会社さん(以下シーサーさん)で行った「企業出張版」です。
企業とPerl入学式
全国各拠点のPerl入学式は以下のフォーマットで行っています。
「勤め先でPerlを書くことになったので受講しに来た」という方も結構いらっしゃりかつ歓迎しているのですが、いざ企業でPerl入学式の通常講義を正式に社員教育として使う場合にはデメリットもあります。
- 月1回はプロ養成の意味では悠長過ぎる
- 社員に休日(土曜日)の参加を要請できない・要請しづらい
- 全5回の約20時間のカリキュラムはそこまで高度な内容ではない
上2つの内容は、社内でPerlに詳しい方が講師をやって「社内Perl入学式」をやれば解決します。Perl入学式の資料は社内教育として差し支えなく使用可能なライセンスで公開されており、そのような使用は大歓迎です。公開事例では株式会社シャノンさんの例があります。
実際、サポーターをしていると「この企業はPerl入学式の資料を使っているらしい」という話を聞くことがあり、時々意外な企業が使っていることを知り驚いています。Perl を使っている企業は少なくなれど、ここまで前提知識を低くしようと心がけたプログラミングの資料は案外少ないのかもしれません。
そんな中、2017年の春にシーサーさんより人づてに私宛に依頼がありました。
Perl入学式の出張講義をして欲しいという依頼
シーサーさんはPerlで書かれた各種サービスを運営している会社です。
そんなシーサーさん、プログラミングをやりたいという熱意を持った人であればエンジニア経験がない中途も採用していこうという採用活動をしているとのこと。なかなか人を育てないIT業界でこの方針は素晴らしいです。
この時、採用したエンジニアの卵にうってつけなのがPerl入学式の資料。もちろん、シーサーさんも社内でのPerl入学式の開催を検討したものの、教育係となった社員の負担や属人化の懸念があったり、また社員でプログラミングを教えるのが得意・乗り気な人が少数といった理由で、二の足を踏んでいたそうです。
そんな中でシーサーさんは「実際に通常カリキュラムのPerl入学式を運営している講師経験のある人に来てもらおう」と思い立ち、東京開催で多く会場を貸している私の会社に声をかけてきたというのが最初の依頼。具体的には、シーサーの石川さん (@toona) が私の上司である佐々木 (@norinux) と知り合いだったため、その流れで私に話がやってきました。
その経緯や意気込みに私も賛同し、ぜひやってみたいと思いました。ただ、私も会社に所属する会社員なので、平日に何回も呼ばれて自分の仕事とは無関係(サーバ運用保守が主な業務であって、教育事業をやっているわけではないので)なタスクに携わるのは理解が得られないだろうという懸念がありました。
これについては、上司 (@norinux) も、上司の上司 (@hidehigo) も、「少しくらいならいいんじゃない?」みたいな返答で拍子抜けした覚えがあります。
ちょうど2017年5月に入社する社員が数名いるということで、というわけで1ターン、Perl入学式と全く同様のカリキュラムをやってみることになりました。
企業出張版Perl入学式 inシーサーさんの風景
初日は5月11日でした。
I'm at シーサー株式会社 in 渋谷区, 東京都 https://t.co/VFZ2aOZqnp pic.twitter.com/aRTEDtE5GA
— OGATA Tetsuji (@xtetsuji) May 11, 2017
シーサーさんでは新入社員に Mac を配布しているということで、Windows ユーザの環境構築が大部分の第1回は圧縮して第2回にくっつけるようにして、全4回にしました。
5月は2名の新入社員の方に参加いただきました。
人数も少ないので、大人数が基本の通常版Perl入学式と違い、概ね早く進みます。進行がスムーズなのは人数が少ないと詰まる場面も少ないからで、しかも一人一人に気配りが行き届くので、贅沢だけど効果も高いなと講師をやりながら感じました。
5月の企業出張版Perl入学式はとても好評だったようで、引き続き7月と8月にも依頼をいただきました。むしろ、ほぼ毎月のペースで意欲ある新人を採用する姿勢に敬意を抱きます。
実は、間の6月は「5月の出張版、ちょっとうまく行かなかったかなー。もう声かからないかなー」と少し反省していたのですが、7月に再度依頼を頂いて嬉しかった記憶があります。
7月と8月も、だいたい2名から3名でしたが、習熟度は各人それぞれでした。
- 本当に素人(入社した1日に初めて「黒い画面」を見た人も)
- SIer で Java や PHP をやっていたことがあるが、自由にやるという感じではなかった人
- 異業種から来た私と同世代の人だけど、昔からパソコンいじりが好きで、独学でプログラミングをしている方
本当に素人の人は一つ一つ確実に教えたり、PHP の経験がある方は PHP と Perl を対比させてみたり、少人数ならではの家庭教師的な講義が出来たのも良い経験でしたし良い実験でもありました。
依頼方法、費用など
こう書くと、もしかしたら「うちの会社にも来てほしい」という方がいらっしゃるかもしれません。
なかなかタイミングが合わず、JPAもしくはPerl入学式側で公式の窓口を用意できていないという状況なのですが、それが用意できるまでは私 (@xtetsuji) が窓口となります。以下の方法でお問い合わせ下さい。
- メール(GitHub @xtetsuji で公開しているものです)
- Twitter DM @xtetsuji
- Facebook DM OGATA Tetsuji
シーサーさんの最初のケースでは人づてに依頼が来ましたが、講義費用の支払い等は一般社団法人 Japan Per Association (JPA) を通して行ってもらうことにしました。
役割分担は以下のような感じです。
- サポーター斡旋:Perl入学式
- 講義費用の取り扱い:JPA
土曜日にオープンに募集が行われる通常版のPerl入学式は参加費無料で行っていますが、企業出張版Perl入学式は有料で提供するようにしました。
- 平日に時間を割いて稼働することは、ボランティアでは続かない
- 価格設定が無料だった場合、常時呼ばれると破綻する
- 企業としても新人教育コストが圧縮できるので、有料でも見合う
- 有料にすることで、Perl入学式側でも(有料前提で)平日稼働が可能でかつ講義実績のあるサポーターを用意しやすくなる(かつ対価と責任も釣り合う)
Perl入学式と JPA は協力関係にありますが、その流れで何度か JPA と話し合って上記のような企業出張版Perl入学式の取り決めをほぼ策定済みです。もう少ししたら正式アナウンスが出せるかもしれません。
2017年春から公開したいと思って延び延びになっていた、シーサーさんでの企業出張版Perl入学式の試み。ようやくこのブログ記事で第一報となりました。2017年を振り返るアドベントカレンダーの記事として、結果的に良い話題だったかも。